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自らもユーザーであるからこそできる、VR法人HIKKY”中の人”の仕事について

世界中から100万人以上の来場数を誇る世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット」。バーチャルマーケットは”バーチャル世界の生活圏・経済圏を発展させ、クリエイターのさらなる活躍を支える”ことを目指してスタートし、多くのクリエイターの方々に支えられながら今年8月で6度目の開催を迎えます。

そんな”クリエイターファースト”なバーチャル事業を展開するVR法人HIKKYで、一番クリエイター/ユーザーと接する重要な役割を果たしているのが『HIKKYユーザーコミュニケーションセクション(UC)』です。今回はUCチームの中から下記の3名の方々に、HIKKYの”中の人”としての仕事のやりがいやぶっちゃけトークまでたくさんお話を伺いました!

育良啓一郎さん
2019年10月HIKKY入社。UCセクションマネージャーとして公式SNS運用、配信管理、お問い合わせ対応、イベント企画進行、広報企画進行、UCチーム管理などユーザーコミュニケーション業務全般を担当。

個人活動として、SCP財団での執筆(ねこですよろしくおねがいします)、VRSNS向けの3Dアバターやアイテムの制作、VTuber活動などを実施。
さらに元子役(さわやか3組など出演)という異色の経歴の持ち主。

ノラネコPさん
2020年10月HIKKY入社。公式Twitter運用、配信動画の作成、YouTubeでの生配信の企画、出演など、”ユーザーに情報を発信する事”全般を担当。
また販売用アバターのプロモーション用写真撮影、アバターのクオリティーチェックなども行う。

個人活動として、VTuber「のらきゃっと」の運用者としてキャラクタープロデュース、配信活動や、VRChatを代表するアバターの一種である「量産型のらきゃっと」の企画・販売も行っている。

ななななさん
2021年4月HIKKY入社。各イベントに関するユーザーからの問い合わせ対応や、イベントの内容をユーザーにわかりやすく説明するためのウェブサイトの原稿作成などを担当。他にも、語学力を活かしてグローバルチームとの橋渡しをしたり、その他諸々のお手伝いもするオールラウンダー。

個人活動として「新春TRPGオンリー展覧会 in VRChat 2021」や「VRゲムマ事前体験会」など、主にVRChatを舞台としたアナログゲーム関連のバーチャルイベントの数々に企画や運営、ワールド制作などで参加している。

UCチームメンバー

(左からアバター姿の育良啓一郎さん、ノラネコPさん、ななななさん)

ーまずは皆さんのHIKKYに入社したきっかけを教えてください!

育良:あるVTuber系ライブイベントを見て感化され、こういう仕事をしたい!と思い立ち、ライブがきっかけではありましたが”ハレよりケ”に関心があり考えを巡らせていた矢先、偶然HIKKYの方と話す機会があり、ここなら自分がやれることたくさんあるぞ、ていうかここにコミットするのが自分のできる最大多数の最大幸福っぽいぞとなり、そのまま社長に紹介していただきました。

ノラネコP:僕はVTuberの運営を行っていて、そちらの活動を専業にしようと前職を退職したのですが予定していたプロジェクトがなくなってしまい、、、1年程はそのまま活動していたのですがさすがに定職に就かないと大変だなと思った時に、自分は今まで何をやって来て、どういう人間であって、っていう説明を1からしなくても良いのはHIKKYだなと思ったのがきっかけです。面接を申し込んだその日の晩に面接を行い、勢いでその次の日から入社しました!

なななな:もともと私はアナログゲーム関連の同人イベントを主催していたのですが、開催日の4日前に緊急事態宣言が出て急遽中止せざるを得なくなり、リアルでの開催が不可能ならバーチャルで開催しようとVRChatでの開催に切り替えたところ、5日で会場が制作できてしまい、そして訪問数も前回のリアル開催での来場数の7倍以上に達しました。何より、新型コロナウイルスの影響でなかなか会って話すということができていなかった仲間たちと『対面』で話すことができたということが来場者からも好評でした。
この経験から、VRイベントの便利さ、リーチの広さ、作りやすさ、ディープな体験のすごさに目覚め、当時イベント準備が進んでいたHIKKY主催のVR上でのインディーズゲームの展示会「GameVketZero」のスタッフに参加し、そのまま入社しました。

ーななななさんは最初はイベントスタッフとして入られたのですね。

なななな:正確にはそのつもりだったのですが、元々HIKKYのスタッフをやっている知人の方から「イベントのお手伝いをしてくれないか」と相談を受けまして、GameVketZeroのプレスリリースを見つけた際にそちらの問い合わせフォームからスタッフ募集を送ればいいのかなと思い、問い合わせを送りました。
その後面接を組んでいただき、「一個人のイベントスタッフに対してもちゃんと面接をするきちんとした会社なんだな」と思っていたのですが、面接中なんだかお話が噛み合わず、蓋を開けたら一時スタッフではなく正社員として入社することになっていたんです(笑)。本当はスタッフ募集は別な正式なルートがあったみたいなのですが、私が間違えてしまっていたようで。思い返してみると、たしかに面接も2回あった気がしますね。なんて言うか、勘違いから始まった関係でした。

育良:僕は逆ですね。HIKKYの方とお話した時に「今は他で働かれているんですよね?副業としてからでもいいですよー」と言っていただいたのですが、「正社員として転職したいです!」と伝えて、そのまま前職を退職し、最終日まで働いた翌日からHIKKYに入社しました。

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(2021年4月開催GameVketZEROのブース)

ー皆さん様々なきっかけですね!VRを扱う会社は最近特に増えてきていますが、何故HIKKYだったのかという理由はありますか?

なななな:元々実際にVRChatで遊んでいた自分としては、やっぱり『バーチャルマーケット』だなと感じていました。話題的にも参加している人数的にもバーチャルマーケットが1番だと思っていましたし、その主催のHIKKY以外は特に目にも入っていなかったです。

ノラネコP:業界としては様々な技術を持つ企業は多々あるけど、VRというものを楽しむ人々の『文化』の最先端を行ける、文化の方向性を創ることができる力を持っている企業はどこかと考えた場合「HIKKYだよなぁ」と。HIKKYの中で仕事をしていれば、VRの文化のトレンドを動かせるような気がしたんです。あとは自分のVTuberといった個人活動も活かしながら仕事ができるのも魅力でしたね。

育良:僕もHIKKYがアバター文化の渦の中心に当時最も近いと考えたからです。それとノラPが言うように仕事でも自分の個人の活動ができるところも魅力ですよね。自分が出る個人の配信の告知とか、普通に会社のチャットに放り込んでいますし(笑)。会社のスケジュールにも、個人の配信予定とか「遊ぶ」とかも僕は全部入れています。だから「ゲームで遊ぶからミーティング無理だ」とか、「ごめん、この後配信あるから」ということも理解してもらっています。

ノラネコP:普通の会社だったら自分が配信をやっていることを打ち明けるのも面倒ですし、みんなの理解があるのは嬉しいですね。

育良:仕事とプライベートの境目が良い意味でないよね。プライベートでもVRChatに入っていろいろな方とコミュニケーションを取っているし、自分も3Dアイテムの制作をして8月のバーチャルマーケット6でプレオープンするVketMallにも指輪を出展するからクリエイター側でもあるし。

なななな:私もVketMallで宝箱を出展します!他にも個人活動で行っているのがVR展示会とイベントの企画なので、完全に仕事と重複しているというか、特に区別の必要がない状態なんです。同じ分野をやっているので、みんな仕事と趣味を一緒にやっている感じはありますよね。

育良:プライベートでもバリバリVRやっている僕たちからすると逆に仕事でVRに入るのが不思議な感覚で 、それくらい日常なんです。僕らの他にもUCセクションに「ふららん」という者がいるんですけど、仕事とは別で個人活動としてVRイベントを毎日やり続けて、先日そのイベントが遂に700回に達成したという強者もいます!

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(VR空間で仕事をするななななさん、育良さん制作の3Dアイテム、ふららんさんとふららんさんの開催するVRイベントの様子)

ー逆に大変なことや苦労している点はありますか?

なななな:ユーザーサポートという立場はユーザーの方々と直接接するポジションであるため、ユーザーの生の声に応え、また要望を各所にフィードバックすることができるという楽しさがありますが、その一方で自分の回答がそのまま運営としての回答になるため、プレッシャーと責任を感じています。

育良:自分が「直接の接点になること」自体が、楽しくもありやりがいでもあり苦労する点でもあるよね。

ノラネコP:とにかく第一線でユーザーと触れ合うので、プラスの意見もマイナスの意見も、いの一番に浴びるのがこの部署。好意的な意見を見ると嬉しくなるし、その言葉を直接肌で受け取れるのはUCセクションならではですが、逆も然り。

ーたしかにSNS運用やユーザーコミュニティでは炎上などは一番気をつけなければいけないですよね。

育良:自分たちもVRユーザーでVRカルチャーに親しみがありますし、個人での発信もしているからこそ、どのようなことが望まれているかもある程度空気感でわかるところはあるので、文章一文も常に気をつけながら発信するよう動いています。もちろん、僕らも完璧な人間ってわけではないので手探り手探りですけど。やっちゃいけないことリストを出せって言われても空気感だから出せないんですよ。

ノラネコP:ロボットに”やったらダメなリスト”を渡したら動かなくなったみたいな、1件1件その事例によるってことだよね。自分のやっていることに自信が持てるのは、論理ではなく今までの経験などから得た空気みたいなところはあります。

育良:それこそ、本当に『人である』っていうのは重要なのかもしれないですね。

ノラネコP:相手にするのも、1人1人の人間だしね。

ー自分たちも1ユーザーだからこそユーザーコミュニティの仕事がうまくできていると。

育良:そうですね、ただの企業担当者とユーザーみたいな関係性だけだとやっていけないと思います。実は、僕は最初はエンジニアとしてHIKKYに入ったんですよ。ただ、当時のHIKKYのSNS運用が今以上に下手だったんです(笑)。だから会社に口うるさくアドバイスをしていたら、いつの間にかSNSチーフになっていました。その当時からSNSを管理するメンバーはいたのですが部署として1つにまとまったほうがいいという話になり、ユーザーとの接点を受け持つチームを改めてセクションとして起こそうと今年の4月に発足したのがユーザーコミュニケーションセクションなんです。なので、会社組織の中でも多分1番若いセクションじゃないかな。

ノラネコP:たしかに、最初本当に下手だったよね(笑)。

育良:例えばユーザーとの企画などもこちらから一方的にお願いするばかりで、向こうにはあまり益がないケースが多かった。最近は可能な限りそうならないよう、Win-Winの関係になるように心がけています。普段VRの界隈で遊んでいてVRの文化に親しみがあるからこそ、何をしたら喜んでもらえるか多少はわかっていますし、頼む相手によってもそれが違ってきたりしますしね。

ノラネコP:UCチームはイベントの運営側というか楽しむ側の目線で見ていたりするよね。

育良:そうそう、ある意味冷めた目で外野から見ているんですよね。正直HIKKYのやることなすこと全部をすごいとは思っていなくて、もちろん良いところはいっぱいありますがダメなところもたくさんあるので、ダメなところは全部潰すくらいの気持ちでいます。せっかくHIKKYに入れたからにはできることはやりたいし、俺にやらせてくれってテンションでSNSを奪い取った感はありますね。
でもお互いのことを本気で信用しているからこそ、思っていることが言えて、できるのはHIKKYのとても良いところですよね。VRの会社なのに思ったより社員に戦闘民族が多くて、みんなが本気だからミーティングとかでもめちゃめちゃ意見言い合ってぶつかりあうしね(笑)。でもその後に雑談で「どこどこの何が美味しかったよー」「いいねー」って普通に和やかに会話してるんで、そのギャップも面白い。

ノラネコP:基本リモートでテキストベースだからこそ、意見を出さない人が薄れてしまうというのもあるし、自分が疑問に思ったことは全部口に出して言えばHIKKYのみんなは聞いてくれるしね。僕もHIKKYの全てに賛同してジョインしたというよりは、せっかくこんなに良いところがあるんだから、ここはダメだから正そうみたいな、なんとかしたい気持ちで入ったところもあります。
UCチームはHIKKYの中にありつつも、とにかくユーザー目線・俯瞰目線で、組織を外から見つめる組織!HIKKYの思いをユーザーに伝えるにとどまらず、ユーザーの思いもHIKKYに届ける、双方向性の部署だと思っています。

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ーユーザーとコミュニケーションを取るうえで特に心がけていることはありますか?

育良:私からの片思いになることもありますが、ユーザーとの仲間意識は大切にしています。“ユーザー”と言ってはいますが正直その感覚はあまり無く、むしろ一緒に何かをするために手を組むパートナーのように捉えています。ユーザーの皆さんにも僕のことはHIKKYにスパイを送り込んでやったぜ!と思ってもらうくらいでいいです。それが本当にユーザー目線になるってことなのかなと思います。

ノラネコP:常に人間として誠実で、ユーザーからも「この人ならば信用できる」と思われる人物であることを意識していますね。また、常にVRを取り巻く界隈で遊び、楽しみ、ユーザーとしての気持ちを忘れないようにしています。

なななな:それぞれのコミュニティーの文化や風習を学び、それに合わせて接することを心掛けています。Vketシリーズのイベントは、VRの世界、同人誌、音楽、ゲームなど、それぞれ異なるプロダクトを集中的に扱うものです。さらに、日本語圏のみならず海外からのユーザーも多数集まり、国や地域などによって異なるバックグラウンドを持っています。相手の文化を尊重し、その界隈の「お約束」を守り、失礼な表現にならないように気をつけることで、気持ち良くコミュニケーションが取れるよう努めています。

ー8月のバーチャルマーケット6開催まであと少しですが、UCチームとしての注目ポイントはありますか?

ノラネコP:それぞれのブースを、なるべくそれぞれのオタクが担当しているので、とても良いものになります!今回僕も自分の趣味にしているもののブースの制作にも関わらせてもらっていて、本気でオタクのこだわりで作っているので、その辺は是非注目してほしいです。

―制作にも関わっているんですか?!

ノラネコP:オタクの意見として口を出せば聞いてくれるんです。一般的にはこういった意見だけど、オタクの意見としてはこうだよ!みたいなアドバイスをちゃんと聞き入れてワールドのデザインに取り入れてもらったり、企画が少し変更になったりなど、HIKKYはとても柔軟なところがあるんです。HIKKYにはあらゆる分野のオタクがいますから、いろいろな文化を知っているからこそちゃんとそれを活かすタイミングがあると感じています。

なななな:今回のバーチャルマーケット6では”クリエイターを改めて主役にする”という理念のもと、コミュニティの方々と一緒に行う様々な機会を増やしていく取り組みをしているので、是非楽しみにしていただければなと思います。あと詳しいことはまだ言えないのですが、MOKURIのファンたちがVket6に合わせて何かをするかもしれません!

育良:前回のVketでは会場数が多すぎてユーザーが回りきれないという課題がありました。今回は会場数や出展数もあえて抑えて、1つ1つのクオリティを少しずつ上げていく努力を続けています。バーチャルマーケット6に合わせて常設型のVRモールである「VketMall」のプロト版もオープン予定で、新しい要素もたくさんあるので是非楽しみにしていただきたいですね。
そもそも、UCセクションを発足させた目的もクリエイターファーストの理念に基づくためというところもありますし、HIKKYもイベント全体も再度ユーザー目線に立ち返ってきているので、期待していていただきたい。本当はもっと色々話したいのですが、、あと多分3時間は話せますね(笑)。でもこれくらい話せないとSNSの運用はできないです。

Vket6コンセプトワールド

(バーチャルマーケット6 一般出展ワールド・コンセプトアート)

ー最後に今後の展望やチャレンジしたいことを教えてください!

育良:社内においてはユーザーの代表として、対外的にはHIKKYの代表としての動きをより力強く出来る様になっていきたいです。「ユーザー接点」を受け持つのがUCセクションである以上、その架け橋となるのが使命だと考えています。まだ完璧とは言い難いですが、個人としてもチームとしても成長していきたいです。

ノラネコP:自分は勿論「バーチャルのオタク」ではあるのですが、他にもたくさんの趣味趣向を持っている非常に雑食なオタクでもあります。今後開催されるイベントや出展されるブースなどに関して、自分の持つ知識やこだわりなどを総動員して、より良いものが作っていけるように努力したいと思っています。HIKKYではそういう「自分の好きな、造詣の深い分野」に携われる機会が非常に頻繁に巡ってくるので、見逃さないようにしたいですね。

なななな:バーチャル空間はアイディアや情報を最も純粋に届けることができる媒体で、クリエイターたちの頭の中にあるものを最もダイレクトに出すことができる場ですので、もっと色々な分野のバーチャルイベントをやってみたいです。
さらにHIKKYがまさに代表ですが、VRがあれば離れた地域にいる人たちともダイレクトにコミュニケーションが取れて、人と直接会うために移動するコストがかからなくなります。これは数十年のスパンで見れば、都市に集中する必要がなくなるということで、ヒトはもちろん物資の移動コストも減らしていくことができるでしょう。VRによるエネルギー問題の解決です。そんな、VRによる世界の転換を推し進めることの手助けができたらと思います。