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【ウェビナーレポート】出展企業とめぐるバーチャルマーケット2022summer ~メタバースの活用で企業はどう進化するか~

出展の工夫や役員の説得方法まで!?
メタバースに参入した企業の担当者リアルトーク

この夏、世界最大のVRイベント※『バーチャルマーケット』を運営するHIKKYと、その出展企業「株式会社 大丸松坂屋百貨店」、「SMBC日興証券株式会社」が対談形式のウェビナーを開催いたしました。事前応募制のトークセッションから、最新のメタバースの活用事例をピックアップしてご紹介します。

  1.  メタバースにいち早く参入するなら「バーチャルマーケット」
     /HIKKY 大河原

  2.  ミニマムな出展から大きくスケールできた成功事例
     /大丸松坂屋百貨店 田中様

  3.  金融とメタバースの出会いが生む、新しい可能性
     /SMBC日興証券 鈴木様

1. メタバースにいち早く参入するなら「バーチャルマーケット」

そもそもバーチャルマーケットってどんな場所なのか。

(大河原)メタバース上で開催される世界最大のVRイベント、それがバーチャルマーケット(通称:Vket)です。会場は「パラリアルニューヨーク」や「パラリアル大阪」といった現実の都市をメタバースに再現した空間。もちろんリアルなだけでなく、メタバースなりの表現や遊びも加わった新しい都市です。その中でアバターなどの3Dアイテムやリアル商品(洋服、PC、飲食物など)を売り買いできるほか、会場内で乗り物に乗ったり、映画を観たり、音楽ライブに参加するなど、バーチャル空間ならではの”体験”を提供しています。

バーチャルマーケットの最大の強みは、UGCで始まったマーケットである点。昨今、バーチャル空間をつくる技術のある企業は世界中にたくさんあります。でも、作ることよりその空間にお客様を呼ぶ、定着させることのほうが重要なのです。本イベントがメタバース事業に参入したい多くの企業様に選ばれるのはこういった理由からです。お客様が会場内を自由に回遊するので、商品の販売はもちろんサービスのPRの場としてVRコマースの新たな可能性を創出しています。
現在では、日本はもとより世界中から100万人を超すお客様が来場するようになり、ギネス世界記録™にも認定※されました。会場内は、日本語/英語表示の切り替えにも対応しており、(ここは各ブースの企業様判断にもなりますが)ご案内スタッフの中にも複数言語に対応する方を配置されることも増えました。

※バーチャルマーケットは「バーチャルリアリティマーケットイベントにおけるブースの最多数」としてギネス世界記録™に認定されました。

来場者はどんな人たち?

来場者の大まかな内訳は男性7割、女性3割ほどで、20代〜30代が中心です。国別では日本とアメリカからの来場者が多くいらっしゃいます。比較的高価なVR機材を揃えて参加するファンが多いため、「自分の好きなモノ・コトにはお金をかける」など、購入や体験にこだわりを持つ層にリーチできるという点が魅力と言えます。

ハードルを感じている担当者様は多いが思った以上に参入はかんたん

もちろん、出展したい企業様の強み、売りたいものによって来場者さまの属性とのマッチングさせる必要があると思います。とくにメタバースに初めて参入される場合には、「ユーザーに何がうけるのか」、「どういう方法での参入が一番効果的なのか」など悩まれている担当者様が多いです。
HIKKYではそういった課題感もしっかりヒアリングして、営業やプランナー、PRが伴走しながら効果が最大化できる出展方法を提案しています。このあとの事例でもお伝えしますが、たとえば「PRすることだけが目的で販売したいものはない」とか「そこまでの予算はない」といった場合、必ず店舗まるごとである必要はないのです。看板一枚や空間内CMなど、ミニマムなところから参入いただけるのもバーチャルマーケットの魅力です。

2. ミニマムな出展から大きくスケールできた成功事例

最新イベント「バーチャルマーケット2022 Summer」へ出展した印象は?

(田中)大丸松坂屋百貨店のバーチャルマーケット出展は今回で4回目となります。その中でも「バーチャルマーケット2022 Summer」では、ニューヨークの都市を模した「パラリアルニューヨーク」の一等地とも言える場所に、大丸松坂屋百貨店のビルを建てて出展しました。アンケートやメディア露出の結果を見ても非常に盛況な印象です。
パラリアルニューヨーク全体の描画もクオリティが高く、空間として美しい。大丸松坂屋百貨店としても過去最大規模の広い店舗を持ちましたので、お客様も大きな空間でゆとりをもって遊んでいただいたように思います。

予算がミニマムでもメタバース参入は可能。「ステップアップ」方式の良さについて。

すでに何度も出展している当社ですが、はじめはこのような本格的な取り組みではありませんでした。バーチャルマーケットの片隅に屋台をだし、大丸・松坂屋の看板をかけただけのブースで、本当にミニマムなところから始めたのです。今でこそ、Vket2022 Summerのマーケット内で購入できる商品は600点ですが、当時は7点です。もちろん今の出展に比べたら出展費用はリーズナブルなものでした。ただ、それでも当時大きく話題にしていただけましたし、記念に配布した「さくらパンダ」の3Dモデルは800体くらいダウンロードされて、今も大切にしてくれる人がいます。VRでこういった企業キャラクターのアイテムを日常使いしてくれて、さまざまな機会からファンになってくださるのは、担当者としてもうれしい限りです。

2回目は屋台を少し大きくしました。そして屋台の前に雪の降る露天風呂を配置したりしました。そうしたところ、お客様が自然発生的に集まって宴会をはじめたり、You tuberの方々も来店して配信してくださったりするようになりました。ファンがついてきた!という実感がでてきたのが2回目からです。
会期の中盤からは15%オフのビールやオイル、ジュースなどサマーギフトのセールも開始。もう一度お客様に来ていただけるような仕組みも作りました。こうやって、徐々にひろげていくことでメタバース空間自体や、利用者の理解度もあがっていってそれと同時にファンもできていくので非常にメリットがあったと思います。

そして、3回目では店舗らしい店舗に。「バーチャルでは食品の味・見た目を伝えるのが難しいのでは?」という疑問をいただくこともありますが、クオリティにこだわった3Dを用意したり、バーチャルならではの遊びを加えたりと、食品の魅力を別の角度から引き出す工夫を凝らしています。

ちなみに、出店しないとわからないこととしては、食品の実物だけでなく、3Dモデルも案外売れるということがありますね。はじめは販売用というよりも、お客様によりわかりやすく商品の魅力を伝えるために作った3Dだったのですが、試しに販売したところ百個という単位で売れたので、うれしい誤算でした。

メタバース上での宴会を開いた際には、お客様同士だけでなく弊社スタッフもいっしょに参加してコミュニケーションをとっています。

意外と知らない出展メリット。実店舗や通販だけでは生まれないファンに届くコンテンツ。

初めて出展した時は一部署というか一担当のみでプロジェクトを進めていたのですが、そこから取材がかなり入るようになり、一時期広告換算価値が2.4億円もの数値になったこともあります。また、現実の店舗や通販では、大丸松坂屋百貨店のファンは40〜60代くらいの女性が多いのですが、VRの中では「20代〜30代の趣味にお金をかける男性」という全く違う層にアプローチできました。

会社として「こんな大きなチャンスがあるなら、一部署だけでなくSNSや接客担当者も参加してみんなで盛り上げよう、となったのが4回目の「バーチャルマーケット2022 Summer」 でした。今回メタバース内での体験やコミュニケーションに詳しいスタッフの力を借りて、接客面も強化しています。
メタバースとECの一番ちがう所はやはり「体験」があるところ。ECは2Dで商品を見て、お客様がひとりで決定されることが多いけれど、メタバース上ではリアルと同じようにお客様が集まってきたり、スタッフと会話ができたり、より豊かなコミュニケーションが生まれるのです。空間自体を楽しみながら品物をご覧いただけて、ファンにもなってくださる。これまでにないお客様との関係性が築けたことが、なにより意義のあることだと思います。

3. 金融とメタバースの出会いが生む、新しい可能性

最新イベント「バーチャルマーケット2022 Summer」へ出展した印象は?

(鈴木)SMBC日興証券のバーチャルマーケット出展は今回で2回目です。1回目は単独出展でしたが、今回はグループ企業も含めての出展となり、よりこだわった、大きなブースを構えることができました。
弊社も大丸さんと同じパラリアルニューヨークに出展しているのですが、やはりVR空間に入った瞬間の美しい描画に目を奪われます。全体としてお客様が「ここにいたい!」と思えるような空間ができ上がっているから、企業ブースを出す意味が生まれますよね。体験型のアトラクションのような出展も増えていて、一ユーザーとしてバーチャルマーケットを巡って楽しめました。

堅いイメージのある証券会社がバーチャルマーケットに出展するまで道のり。

私自身が新規事業を創出する部署にいて、「どういうことができるだろう」ということを2021年夏頃に考えていました。投資やお金のことって、生きる上ですごく大事なことのはずなんですが「目に見えなくて、小難しくてとっつきにくい」「投資するのは怖い」という風に思われる方もやはり多い。そこに課題を感じていました。
ちょうどコロナ禍も重なって、「バーチャルショップ」などをコスメブランドさんが出し始めていたんです。その状況を目にして「うちもバーチャル空間でなにかできるはず」と考え、ネットで調べて「世界で一番、人が集まるバーチャルイベントがある」ということでバーチャルマーケットを見つけました。

一方で、「証券会社がVR空間をどう活かせるんだ?」という声は社内にもちろんありました。メタバース・VR空間は最新のテクノロジーですから、今のトレンドというところを見据えると勉強・研究していくということはもちろん必要だが、本当に結果が出せるのかと。
役員の説得にはHIKKYのご担当者さまにも協力してもらいながら、ひとつひとつアンケートや数字をとって、事前調査を重ねました。VRをしている方々の属性などが前半にでていますが、そういった部分と、自社のPRしたい部分がマッチするかどうかという点などですね。丁寧に調査して、伝えたところ「やってみようか!」となりました。

大きな反響があったのはやはりその意外性から。「メタバースだからできる表現」にこだわった出展がお客様には好評価。

2021年に初めて「パラリアル渋谷」に出展したのが「株価連動ジェットコースター」です。工夫したのは、金融だからといって、そのイメージには固執しないこと。バーチャル空間でどう楽しんでもらうのかをHIKKYの担当の方と一緒に考えました。結果、2004年〜2021年までの出来事と、株価の推移をジェットコースターで体感してもらうアトラクションができあがりました。これが思った以上に反響があり、ユーザーアンケートでも「投資をもっと勉強したい」という声が多くあがりました。金融を身近に感じてもらうという目的に、しっかりマッチした企画になったと思います。

フォトスポットなどの空間を充実させることでSNSシェア・拡散なども。

「バーチャルマーケット2022 Summer」の出展では夏にぴったりのミステリーダンジョンを企画しました。今回は、金融や投資に関してもう少し深掘りした知識もお届けきればということで、クイズ形式のダンジョンになっています。ギミックや内装もこだわった作りで、非常に大きな空間です。

前回はSMBC日興証券単独での出展でしたが、「金融機関は社会の新しい動きを捉えていく必要がある」ということで、今回は株式会社三井住友銀行・三井住友カード株式会社合同で出展しています。やはり「世界最大のVRイベント」というところが決め手になって、100万人のひとが集まっている場所に一緒に展示したいという希望が出てきて合同出展が実現しました。

クイズをすべて正解すると、ダンジョンを抜けることができ、上場の鐘をもしたギミックの前で鐘をうつ体験ができます。ここでSMBC日興証券のロゴといっしょに写真をとって、SNSでシェアするお客様も多かったです。リアルでもそうだと思うのですが、メタバース上でもフォトスポットや、そこへの導線をしっかりつくるのは重要ですね。

また、アンケートにこたえたらアバターがもらえるなどのしくみも用意しました。
ちなみに、ここに飾っている3DモデルはHIKKYさんには頼まず、私(鈴木)たちで3Dモデル化を担当しました!私自身、モノ作りが好きだったこともありますが、クリエイターさんたちの大変さや思いもわかろうと思ってYouTubeをみながら3DCGモデリングに挑戦してみました。

いろんなメタバースの構築方法があるなかで「バーチャルマーケット」に出展する意味。

まずはやはり「集客力」。世界各国のひとが、これだけ集まる場所は他にはない利点だと思っています。とくにPoC段階はあるものの、新規事業として考えて色々試すためには「人が集まる」という点は非常に重視しています。そこにプラスして広告効果もありますからね。初出展時から話題に上がりましたし、認知がとれるのが魅力です。既存のお客様層とは異なるより若い層との接点を持つことができていますし、弊社をより身近なものとして感じてもらえるのも嬉しいですね。

  • バーチャルマーケットの利用者数はメタバース上のVRイベントの中で世界最大。イベントごとに100万人が来場する。

  • バーチャルマーケットの利用者の属性は20代〜30代メインで男性7割、女性3割。とくに趣味や自分のこだわっていることにお金をかける層が多い。

  • 大きな店舗でなくても、看板やCMなどミニマムなところから参入できる。

  • 企業様ごとの課題や特徴、費用感にあわせた企画を、VR空間やVRユーザー特有の文化に詳しい担当者が伴走して提案。

  • 新規層へのリーチにより、新しいファン層の開拓や付随的に生まれる広告効果が見込める。