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【ワールド紹介】パラリアルパリ紀行

冬のパリの空気は、電子の匂いがした。

透き通るような青い空に、虹よりも高くそびえ立つエッフェル塔。眩くきらめく電子公告に、空飛ぶ楽器にアバター。ここは「パラリアルパリ」。インターネットを通じて行くことができる、仮想世界の花の都だ。「バーチャルマーケット2022 Winter」というイベントの会場の1つで、なんと無料である。自宅からパソコンを付けてひとっ飛び。ロード時間30秒のフライトで、現実のパリを模した街並みを楽しむことができる。

https://winter2022.vket.com/world/2

広い道幅に整然と高さが揃った石造りの街並み、そして装飾付きの縦長窓に、軒先のカフェテリア。長く大きく根を張った街路樹たちが、この街の歴史の深さを伝えてくれる。バーチャル世界なので、自由に車道を歩けるのが良い気分だ。自動車に轢かれる心配もない。

甘い匂いに誘われてカフェテリアに立ち寄ると、本場の洋菓子やコーヒーを持つことができる。ちなみにパリのカフェではお酒も飲める。トリコロールカラーの土産物袋が旅情をかきたてる。

また、近年フランスでは日本食も増えてきている。大丸松坂屋百貨店では、抹茶ショコラや大福などの和洋折衷なスイーツも頂けた。2階にはアートギャラリーもあるのが、芸術の街たるパリらしい。

パリといえばファッションの聖地でもある。こちらは化粧品のマリークヮント。ロンドン生まれのデザイナー・ブランドはたゆたえども沈まず、パリの地でも存在感を発揮してVRChatのパリジェンヌたちを支えている。

エッフェル塔を観に行くにはセーヌ川を渡る必要がある。橋の上をゆっくりと歩いても良いし、空を飛んでいっても良い。エッフェル塔の前にはアバターのためのランウェイがあり、塔をバックにポーズを決めることができる。さらに、その隣にはサイケデリックなヤマハのビルが建っている。

パリは音楽の都でもある。ビルの地下にはライブステージがあり、ボタン1つでドラムやギターを呼び出すことができる。バーチャル空間、VRChatでのライブ活動は、特にコロナ禍以降にアメリカやヨーロッパを中心に広まった。バーチャルのステージなら、いくら声を出しても近くで踊っても問題ない。テクノロジーが新たな音楽シーンを誕生させた。

ここまで様々な分野の中心地となっているパリだが、その進歩は止まらない。EU離脱に伴うパスポート権喪失問題を受けて、マカロン大統領はこのパラリアル・パリの地を欧州の金融センターにしようと、誘致活動を活発に行っている。だからだろうか、ルーブル美術館の前には三菱UFJモルガン・スタンレー証券のオフィスができていた。オフィス中央のゲートからは雪山に出ることができ、アルプスの名峰を滑り降りるそり競技を楽しむことができる。

旅路を締めくくるのは凱旋門だ。この門はただの飾りではなく、門の下のポータルをくぐることで、バーチャル世界のさらなる旅へと進むことができる。空には花のようなパーティクル模様が輝いていて、まるで出発を祝福してくれているかのようだ。

パラリアル・パリのオープンは12月18日まで。フランスの旅路を楽しみたい諸兄諸姉はぜひ、気軽に行ってみてほしい。